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北原信也より

私は歯科の分野での専門を「審美歯科医」としていますが、一般の方が「審美歯科」と聞くと咬み合せなどの機能回復の治療ではなく、歯を白くするなど前歯を綺麗にする治療だとイメージされる方が多いいようです。

もちろん審美歯科の中には、ホワイトニングやラミーネートベニアに代表される歯の色や見た目をよくするための治療が含まれますが、実は本来の審美歯科には歯科のあらゆる知識・技術があって初めて成り立つ治療なのです。

例えば患者さまが、前歯の色、もしくは形が気になるので、歯医者さんへ行って「白く綺麗にして下さい」と言えば、どこの歯科医院でも治療はしてくれるでしょう。しかしそこには、本当に自分の歯と見分けが付かないほどクオリティーの高いものから、確かに白くはなったのだけど・・・といったレベルのものまで差があります。

また、綺麗に治療がされた歯も、長期的に壊れずにお口のなかで機能しなくては意味がありません。審美歯科治療に従事するドクターは、患者さまの状態を審美的観点だけではなく、機能的視点からもトータル的に判断できなくてはならないと考えています。

もちろん、機能的回復も審美的治療もその人の一部として両立していかなくてはならないものですが、なぜ私がわざわざ「審美歯科」にこだわるかにはもう一つ理由があります。

私は海外の学会にも年に2〜3回は参加するのですが、日本の先生の発表は複雑な症例をとても綺麗な結果に仕上げ、技術面ではすでに世界のトップクラスであることが認められています。

しかし、諸外国のドクター達が何より驚くのは、治療前の患者さんの歯の悪さなのです。どういうことかと言うと、欧米諸国では幼少期からの歯のケアーが行き届いているので、日本人ほど歯の問題を抱えている人が少ないのが現状であり、提示されている症例も特に問題のないケースを、より綺麗に美しくした発表が殆どだからです。

こういった状況に対して、いつも他国のドクターから「日本の先生の治療が素晴らしいのは分るが、なぜもっと事前に患者の状態が悪くならないようなアプローチをしないのか?」と、言われるのです。

確かに、外国で聞く日本人のイメージのいくつかには必ず歯の悪さ(歯並びなど)が上げられます。これには、行政の問題、患者さんの意識の問題、そして医師サイドのアプローチの仕方などいくつか原因は考えられます。

病院と患者の関わりあいは、痛みがあるから、もしくは病気に罹ったからなど症状が出てから治療に行くのが一般的ですが、欧米において、特に健康意識の高いアメリカでは、最近は健康で長生きをすることを視野に入れた医療を求める声が高まっており、健康であってもより健康な状態を維持していくための医療を求める人が増えています。

今流行のアンチエイジングなども「病気から健康へ」といった従来の医療ではなく、「健康からより健康へ」と言ったアプローチのひとつです。

歯科の分野においても、今までの悪くなってしまった歯を削ってただ詰める治療ではなく、より先を見据えた、普通の健康の上を目指したアプローチがあることを示して行きたいのです。それが、「審美歯科」であると思っています。

そして、もう一つ審美歯科の観点として重要なのが、その人本来の健康と美しさをなるだけ手を加えることなく(可逆的な治療を行わず)引き出してあげることだと思います。その為の一つのアプローチがノブキッズ・プロジェクトであり、またルウミネッセンスで提唱していたホワイトニングから始まる、歯に対する患者さまサイドの意識のシフトであると思うのです。

国の現行の保険制度にも問題があると感じています。アメリカでは、病院で請求される医療費は莫大な金額です。その為に普通は民間の保険を掛けているのですが、病気になると保険会社が全て負担してくれるわけはなく、定期的に検診に通うなど予防に対して保険会社としての負担を多くするシステムになっています。ですから、病気になる前に病院へ通う習慣が身についていくのでしょう。

日本の保険制度では、予防に対する配分は少なく殆どが治療に対しての支払いです。これでは、患者さまの予防に対する意識も高まらないし、予防に力を入れれば入れるほど、医院としての経営は難しくなってしまうシステムなのです。もちろんアメリカの医療制度の問題も多々ありますが良いところは取り入れられたいいのです。

また、統計的にみて20代〜40代における税率に対する保険料の支払い額の少ない人ほど、健康に対する意識が少なく暴食、飲酒、喫煙率が高いと言う結果があり、これは将来その人に発生する医療費の額が多くなる可能性があることを示唆しているのですが、健康な人が保険料を多くはらい、健康に対する意識が薄い人ほど支払い額が少ないという矛盾を含む状況にあります。

しかし、行政の対応は最後になるもので、まずは私たち医師と患者さまが意識と行動を変えて行く必要があるのではないでしょうか。

そして、いずれは海外でのイメージとして、日本人は歯が綺麗だねと言われるようになることが私の願いです。
 
ノブデンタルオフィス北原信也

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